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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第82章 TRIGGERを独り占めだね




中身を飲み切った後は、豪快に実を真っ二つに叩き割る。中には、白い果肉が詰まっていた。

龍之介から半身を受け取った私は、手を使って果肉をこそぎ取って口へ運ぶ。やっぱりあまり美味しいものではないな、なんて思っていると。3人がじぃっとこちらを凝視している事に気が付いた。

私は、指についた果汁を舐めながら問う。


『何なんですか。貴方達は食べないんです?』

「いや、食うけど。
……スプーンとかは…まぁ、ねぇよな?」

『は?あるわけないでしょう。無人島なめてます?』

「分かってる、お前の言いたい事はすげぇ分かる。でもな、俺達は仮にもアイドルやってんだ。食いもんを、手掴みで貪り食うわけいかねぇだろ…」

『悪かったですね、貪り食ってて』

「今が由々しき事態なのは分かってます。でも、楽が言った通りボクらはアイドル。その辺を踏まえて、もう少し配慮があってもいいんじゃないですか?」

『何で敬語…っていうか、本当に理解してます?生きるか、死ぬか!Dead or Arriveなんですよ!?なのにアイドルだとか配慮だとか!
そんなにそのお手てを汚したくないなら、私が貴方の口に運んでやりますよ!』

「っ、やめて!そのベタベタの手で顔を掴まないで!」


私はついにイライラが頂点に達して、問答無用で天の顔面を鷲掴む。必死に抵抗を見せる天。譲らない私。本気の攻防に引いてる楽。
そんな決死のバトル中、龍之介が私達の間に割り込んだ。


「ほ、ほらこれ!これ見て!小さな貝殻を見つけたんだ!これで掬って食べればいいんじゃない!?スプーンの代わりにならないかな?!」

「さすが龍!ほら春人。いい加減、天の顔面離してやれって」

『……スプーンが見つかって良かったですね』

「キミ、撮影が終わったら覚えていて」ぼそ


一瞬、天の瞳が殺気に光った気がしたが、すぐに笑顔に戻る。そして、龍之介から受け取った貝殻でココナッツの果肉を掬った。


「いただきます。
…うん、プルプルしててデザート感があって美味し」

『え?イカの刺身みたいで、醤油欲しくなりません?』


天はこちらに向き直り、にこっと微笑みをひとつ。
そして、黙ってて。と笑顔のまま囁いた…

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