第82章 TRIGGERを独り占めだね
『私は、ココナッツジュースを入れる貝殻を人数分拾って来ますね』
実に直接 口を付けて飲む事も出来るだろうが。ヤシの実には硬い毛がモサモサ生えていて、ひどく飲みにくそうだ。そう考えた私は、貝殻をコップ代わりにしようと思い至る。
早速、それを手に入れる為 海岸に向けて一歩を踏み出した。
「…なぁ。一応 確認しとくが、これって…」
「ドッキリだよね」
「ドッキリでしょ」
「ドッキリだよな」
「やっぱり2人も気付いてたんだ!」
「多分、龍が1番最後だよ。気付いたの」
「っていうか、カメラどこだ?ずっと探してるけど、どこにも見当たらねぇんだよ」
「もしかして、春人くんが隠し撮りしてたりして…」
「はは。体のどっかに、小型カメラ仕込んでたりな」
「プロデューサーなら、やりかねないよね」
『おや、私の悪口ですか?感心しませんね』
「えっ!いや、言ってない言ってない!」
私が目的の物を手にして戻ると、3人は何やら密談中のようだった。龍之介は大きくかぶりを振るが、確かに今、天の口からプロデューサーと聞こえたような…
しかし。そんなのは ぶっちゃけどうでも良いと思えるくらい、切迫した問題が今の私にはある。
そう。喉がカラッカラなのだ。一刻も早く何かで喉を潤したい。
龍之介にせがむような目を向けると、彼はすぐに私の望む物を理解してくれた様子。
そして、手にしていたアイスピックで器用にヤシの実に穴を開けていく。
「はい、皆んなお待たせ。俺ももう喉がカラカラだ〜。早速戴こう!」
「なんか、こうやって4人で貝殻持ってると、盃でも交わしてるみたいだな」
『そうですね。乾杯でもしてみます?』
「はは!いいね、じゃあ乾杯ー!」
龍之介の掛け声で、私達は汁の入った貝殻を掲げた。
「…うん。自然な甘さが、ちょうど良いね。とても美味しい」
『そうですか?なんか青臭くて、思ったより美味しくないんですけど』
まるで、カメラが回っているかのように食レポをする天。私が素直な感想を口にすると、何故か全員が困り顔をこちらに向けた。