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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第11章 本当に…ありがとう




『……どうして』


分かるのだろう。
今までたくさんの色んな人を見てきた経験から、他人の心の奥が見えてしまうとでもいうのか。


「でもね、頑張り屋さんなのは良い事だけど…。それって、周りから見てたら ちょっと歯がゆいっていうか。
もっと自分に寄り掛かってくれたら。頼ってくれたら…甘えてくれたらって、思っちゃうよ。

多分、そう思ってるのはオレだけじゃなくてTRIGGERの子達も同じじゃないかなぁ」


とっくに空になったお皿に視線を落として、百は寂しそうに言った。
どうして…私の事を思い、そんな顔が出来るのだ。見ているこっちが…胸が痛くなる。


「だから、しんどくなったり 心が折れそうな時は誰かを頼るっていう選択肢を思い出して?
それはTRIGGERのメンバーでも良いし、ユキでも良い。勿論オレでも良いですぞ?
っていうか、出来ればオレで」


真面目な顔で挙手をする百に、思わず笑ってしまう。


「あ、笑ったなぁ!オレがせっかく真面目に言ってるのにっ!くそぅ! あのさ…言っとくけど、全部 本気だよ?
オレが、昨日凄く幸せだったのも…。エリちゃんが辛い時、一番に頼られたいっていうのも…」


テーブルの上に置いた私の手に、百の手がそっと重ねられる。


『…分かってますよ』


人が、人に真剣に思いを伝える為に紡がれた言葉。それが、本気か冗談か。それくらいの判断は私にも出来る。


「ねぇ、もう1つ訊いていい?」

『…さっきは、訊きたい事は1つだって言ってませんでした?』

「ふっふーん!人の考えは常に移ろうものだよエリちゃん!」

『わー、無駄にカッコ良いー』


握られた手に、きゅっと力が加えられて。私の指に彼の綺麗な指が絡められる。


「昨日、君がオレに言った事って…全部 演技?」

『さぁ。百さんは、どっちだと思いますか?』


私が彼の名前を呼び、好きだと。大好きだと何度も囁いたあれは…。


『…まだ、少し時間があるので…。今から、確かめてみますか?』


私がそう言うと、百が椅子からゆっくりと立ち上がって。私との距離を詰めてくる。

私はただ目を瞑って 待つ。

この後、また昨夜と同じ 幸せな時間が訪れる気配を感じながら。

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