第11章 本当に…ありがとう
まるで本当に、彼の恋人になれたかのような。そんな甘い感覚に溺れていた。
やはり彼には、人を虜にする天性の魅力が備わっているようだ。
このまま…百の隣にいれば幸せになれるのでは。なんて考えてしまった自分が信じられない。
今の私に、そんな甘い考えは不必要だ。邪魔でしかない。
「てーーい!」
『……何の真似ですか』
百の指が、突然私の眉間をぐりぐりした。
「いや、なーんかまた難しい顔してるからさ。何か面倒な事考えてるのかなー?って、モモちゃんは思ったわけよ」
『それはどうもご丁寧にありがとうございます』
要は、寄っていた眉間のシワを彼がのばしてくれたというわけだ。
「ひとつだけ、訊きたい事があるんだけどいいかな?
昨日、オレと時間過ごしてみてどうだった?楽しかった?幸せだった?
あ!オレはちなみに、すんごーい幸せだったよ!もう仕事なんかほっぽり出して、エリちゃんと一生家で引きこもってたい!って思ったぐらいに!
あ、でもそうなるとユキにも一生会えないのか…。それは凄い駄目だ…」
え?私が質問されているていで合っているのか?これは。そんな考えを持ってしまうくらい、百は1人でぐわーっと喋った。
でも…そんな彼のおかげで、私も勢いに任せて 素直な気持ちを吐き出せる。
あぁ。私は百の、こういうところがやっぱり好きだなぁ。と思う。
『…私も、凄く幸せでしたよ。なんというか…貴方のおかげで、癒されました』
私がそう告げると、彼は少しだけ驚いた顔をした。でも、またすぐに太陽みたいに明るく笑うのだ。
「ほんとっ!?それは良かった。オレ嬉しいな。
ということで、エリちゃんが疲れて 癒されたいなーって思った時は すぐに連絡してよ!」
『いや、ということで、って…、』
でも、それでは彼の迷惑になってしまう。
「あ、いまエリちゃん、でもそれじゃあオレの迷惑になるーとか考えたでしょ!」
なっ…なんだ、彼はもしやエスパーなのか!?どうして私の考えが読めてしまうのだ。
「今のは、図星って顔だ!あははっ、君って以外と分かりやすい所とこあるよねー!
それで、エリちゃんみたいな子は…真面目で完璧主義者。何でも自分で抱え込んで、周りには頼らない。甘えない」