第82章 TRIGGERを独り占めだね
「ヤシの実って、結構しっかりくっついてるからなぁ…。うん、やっぱり登って採るのが正解だと思う。
今度は、俺が登ってみるよ!」
「龍、いくらお前でも、多分サンダルじゃキツ…」
楽がまだ最後まで言い終わってないというのに、龍之介はスルスルと木に登っていた。
いとも容易く、既に中腹にまで到達している。
なんとも野性味溢れる姿だ。私達が呆然としている間に、彼はついに天辺まで登りつめてしまった。
「あいつ…人間離れしてねぇか」
「10メートルは、あると思うんだけど…」
『あぁ、あんなに高い所で両手を離して…、お、落ちたらどうするんですかっ。見てるだけで怖い…っ』
「あっはは。意外と大丈夫だった!
落とすよー!」
龍之介の常人離れしたファインプレーで、私達はなんとか水分を手に入れる事が出来たのだった。
「無事に採れたのは良かったけど。ココナッツって、意外と硬いんだよな。どうやって、中の水分を溢さずに割ろうか…」
『それなら、これを使ってみては?』
私は、さきほど海辺で拾っておいたアイスピックを手渡した。きっと何かに使えると思っていたのだ。まさか、こんなにも早く役に立つ場面がやって来るとは。
「わぁ、ありがとう!
でも凄いね。こんなタイミングで、ちょうど良い道具が見つかるなんて。まるで、誰かが段取りしてくれてたみた……
はっ…!」
『??』
「「……」」
(あ。龍も気付いた)