第82章 TRIGGERを独り占めだね
「春人くん、気を落とさないで。きっと他に方法があるよ」
『すみません…私はなんと役立たずなのでしょう。駄目プロデューサーと、罵って下さい』
「大丈夫だよ、プロデューサー。キミが頑張ってくれた事は、ボク達には十分伝わったから。一緒に、べつの方法を探そう」
『天…。なんだか、今日は優しいですね。いつもの辛辣さが見る影もないくらい』
「ちょっと。ボクはいつも優しいでしょ、変なこと言わないで」
彼がいつも優しいかは置いておいて、今日は特段優しい事は間違いない。
「あ、おい。あれ見ろよ!あれって…ヤシの実じゃねぇか?」
「本当だ!上の方に、たくさん生ってるね!」
「でも、随分高いけど…採れるかな?」
私達は、ヤシの木を見上げた。そこには、実が4つほど生っているのが見て取れる。しかし、天の言う通りかなりの高さだ。
まず名乗りを上げたのは楽。
「よし。いっちょ登ってみるか。お前ら待ってろ?今にたっぷりココナッツジュース飲ませてやるから」
言うと、楽は木に向かってダッシュ。そして勢い良く幹に飛び付いた。
しかし…
ズルズルズル。と、彼の体は 上ではなく下にずり落ちてしまった。
登るのを諦めた楽は、とぼとぼこちらへ帰って来る。
「……今の、カットで」
『カット?何言ってるんですか。収録じゃないんですから無理ですよ』
そこへ、いつの間にか姿を消していた天が戻って来た。その手には、沢山の石を抱えている。
「ボクがやってみる」
天は、石をヤシの実に向かって投げ上げた。
しかし…
高い位置にある実には、なかなか届かない。10個放って、やっと1つ当たる程度だ。
しかも、落ちて来る気配は一向にない。
「ごめん。この方法は、あまり効率的じゃないかも」