第82章 TRIGGERを独り占めだね

私は勢い良く手を砂浜に突く。それから遠心力を使って、コートの端に向け下半身を ぐいんと伸ばす。

届け！願いながら、踵を上へと持ち上げた。
踵には トン、という軽い感触が。


「なっ、脚を使ってボールを蹴り上げやがった！」

「あの状態からよく…」

『龍！』

「うん！任せて！」


上へと登ったボールの元へ、龍之介は駆け出していた。そして手を大きく振り上げながら、高く高くジャンプ。その長い長い腕は、鞭のようにしなり、いよいよボールへと振り下ろされる！


パァアアァン！！


『……おぉ』

「嘘だ、ろ」

「…あれ？ボールは？」

「はい。1対0で、そっちの勝ちね。お疲れ様」


龍之介の豪傑アタックに耐えられずに消し飛んだボール。それを受け、冷静に勝負を終わらせた天。当然のように、楽は異議を唱える。


「いやいや！待て！俺はまだ1回もボールに触ってすらいねぇから！」

「うるさいな。男が決着の付いた勝負にガタガタ言わないでよ」

「ご、ごめん！俺の馬鹿力のせいで、また迷惑をかけちゃって」

「迷惑っていうか龍！お前は昨日のスイカ割りの件から何も学んでねぇな！！」

『楽。約束は、約束ですからね』

「ぐ…っ」


楽は、唇を噛んだ。
きっと彼の頭の中に、ぐるぐると回っているのだろう。

パパ。という単語が。