第82章 TRIGGERを独り占めだね
とにかく。どんな1点も、1点には違いない。完全に八百長に付き合わされている楽と、嘘を吐かせてしまった天には申し訳ないが、感謝である。
「いや、まだまだ勝負はこれからだ!次はこっちのサーブだな。よし、ここは俺がバッチリ決め」
「いくよ、はい」
「っちょ待っ、おい天!!」
楽は自分が打つ気満々だったが、そのサーブを天が ひょいと放ってしまう。しかもそれは、加点など全く狙っていないサーブだ。いや、もはやサーブではなくパスだ。ゆるゆると山なりに、私の頭上へと降りて来る。
「春人くん!チャンスボールだ!」
『任せて下さい』
私が両手を上げた、その時だ。ブワッと、強風が私を襲った。それはまるで、八百長を良しとしない神様からの掲示。ボールは風に流され、コートの隅を捉えてしまう。
「お、ラッキー!」
「これは計算外…」
「っ、俺の位置からじゃ間に合わない!」
『大丈夫です!』
まだまだボールが地面に落ちるまでには猶予がある。ぐっと足に力を込め、強く地面を蹴る…が。私の厚底サンダルは、ズボっと砂浜に深く埋まった。
そして。ベシャ!っと、顔から砂浜に突っ込んだ。
『ぐぇ』
「春人くん!?」
「うわ…痛そう」
「もらった!流石にもう間に合わねぇだろ!」
顔を上げれば、今まさにコートの隅へボールが落下せんとしていた。
楽の言った通り、きっともう間に合わない。
しかしそれは…普通に立ち上がって、普通にボールを追った場合だ。
『ビーチバレーは…ボールを落とさなければ絶対に負けない!』
「「「 !! 」」」