第82章 TRIGGERを独り占めだね
厳正なるグッパーの結果、私と龍之介。楽と天がチームメイトとなる。
『よろしくお願いします、龍。頑張りましょうね』
「うん!この勝負、絶対に負けられない…!」
ネットの向こうで、天と楽も言葉を交わしている。
「龍の奴、すげぇ燃えてるな。よし!俺達も頑張ろうぜ」
「うん、まぁ…やれるだけやってみる」
「なんだよ、いまいちヤル気が感じられねぇな」
負ける気のない私。勝つ気しかない楽。負けられない龍之介。勝つ気のない天。
そんな私達の仁義なき戦いが、いま始まる。
じゃんけんでサーブ権を獲得したのは、私達だった。ボールを手にした龍之介が、相手コートを見据える。
「よし、いくよ!」
さすがはマリンスポーツに慣れ親しんだ龍之介。ボールは見事に向こうのコートへ。
「よし天!取れるボールだ!落ち着いて俺の方にトスし」
「あぁ。唐突に立ちくらみが」
棒読みでそう言った天の横に、ボールはポスっと落下。シーンと、その場が静まり返る。静寂を裂いたのは、やはり楽の怒声であった。
「おい天!何やってんだ!」
「だって、唐突な立ちくらみが」
「ならもっと言葉に表情寄せる努力ぐらいしろ!ケロっとした顔しやがって!吐くならもうちょいマシな嘘を」
「酷い…楽は、ボクを信じられないんだね。さっきは本当に、立ってるのだってやっとの状態だったのに…」
「え…そ、そうなのか。悪かった、疑っちまって。大丈夫か?日差しが強いからな。涼しいところで休むか?」
「ううん。もう大丈夫。大丈夫だから、さっさとこの下らない茶番…じゃなかった。勝負を終わらせてしまおう」
おそらく…というか、間違いなく仮病。しかし天のあの儚げな表情に、楽はコロリと騙されてしまったようだ。
改めて、メンバーさえも手玉に取れてしまう天の小悪魔っぷりに慄いてしまうのであった。