第82章 TRIGGERを独り占めだね
「分かった。なら、こうしようぜ。
勝負だ。俺が勝ったら、お前潔く脱げ」
「ちょっと楽!そんな、勝負だなんて」
「な、なんだよ。べつに喧嘩しようってわけじゃねえ。こんなのは、ただの余興だろ?」
「馬鹿馬鹿しい。そんな勝負、プロデューサーが受けるわけ」
『いいですよ』
「「 え 」」
「はは!ノリ良いじゃねぇか」
『貴方が勝てば、私は水着になりましょう。その代わり、私が勝ったら…
楽は、社長の事をパパと呼び、ゴルフに誘って親孝行して下さい』
「な、なんだそれ!んなもんに何の意味があるんだ!」
『おや、負けるのが怖いですか?でしたら、今からでも勝負はなかったことにしても構いませんよ?』
「っ、上等じゃねぇか。やってやる!」
勝負は、楽の提案によりビーチバレーで行う事になった。2対2に分かれる必要があり、どうやってチームを決めるかと彼に問う。
そんな私の腕を、天と龍之介が強く引いた。そして、ヒソヒソと声を抑えて言う。
「ちょっと何考えてるの。分かってる?キミ、負けたら脱がなきゃいけないんだよ」
「そうだよ!こんな所で、脱ぐなんて絶対に駄目だ!」
『脱ぐ脱ぐって言わないで下さいよ。何もすっぽんぽんになる訳ではなく、ただ水着に着替えるだけじゃないですか』
「大問題でしょ。水着になれば、間違いなくバレる」
『…そこは、考えがあるので大丈夫です。
それに、負けなきゃいいんでしょう』
「随分と自信があるみたいだけど、まさかキミ…ビーチバレー、経験があるの?」
『多分、得意です』
「怪しい」
「…エリ、フットサルの時も同じ事言ってたよね…」
「それで?サッカーは本当に上手かったの?この人」
「えっと…パスされたボールを、手でキャッチしてた」
龍之介の言葉に、天は額に手をやって俯いた。
『サッカーの時は確かに目算が甘かったですけど、ビーチバレーは大丈夫です。何せ、絶対に勝てる法則を知っていますから』
「エリが絶対って言い切るの、珍しい!」
「で?その絶対に勝てる法則って?」
『…ボールを地面に落とさなければ、絶対に負けない』
腕をぐるんぐるんと付け根から回しながら 楽の元へ戻る私の背中を、2人は口をぽかんと開けて見つめた…