第82章 TRIGGERを独り占めだね
楽は、砂浜の上に設置されたテーブルとパラソルを指差した。
そのウッドテーブルの上には、盛り沢山のカットフルーツ。体に悪そうな色をしたトロピカルドリンクに、軽食などが並んでいる。さらに側には肉や魚といった、バーベキューセット一式が揃っていた。
「なぁ。これも…」
『御厚意です。存分に飲み食いしてくれと仰ってました』
天は、砂浜の上に置かれたブールーシートを指差した。
その上には、丸々としたスイカが置かれている。そして、その側には そっと竹刀が添えられていた。
「…これ」
『御厚意です。存分に昨日のリベンジをしてくれと仰ってました』
龍之介は、海の上にぷかぷか浮かぶ小舟を指差した。
それは15馬力のエンジンを搭載した、4人乗り小型ボート。ちなみに、龍之介が持つ小型船舶免許があれば運転が可能だ。
「これって…」
『御厚意です。存分に乗り回してくれと仰ってました』
3人は口を揃えて、御厚意が過ぎる…と呟いた。
とにかく。この胸焼けが起きそうなほどの御厚意を、無駄にするわけにはいかない。ありがたく御厚意シャワーを全身に浴びるとしよう。
ひとまずは、やはり海を堪能しなければならないだろう。この美しい沖縄の海を差し置くなど不可能だ。3人は早速、近くにあった小屋で水着姿へと着替えた。
どこから見つけて来たのか、楽はビーチボールを膨らませながら愚痴る。
「おい春人。早く着替えて来いよ。せっかく上がったテンションも、お前のそのスーツ姿見たら萎えちまうだろ」
『あ、私は』
「春人くんは、やっぱりスーツじゃないと!な、なぁ天!」
「うん。プロデューサーには、やっぱりスーツだよ」
「は?お前ら正気か?夏の海だぞ?沖縄だぞ?あり得ねぇだろ…」
何かと事情を察してくれている2人は、私と楽の間に割り込んだ。