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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第81章 子供じゃないんだ、分かるだろ




「2人とも、ただいま。重ね重ねごめんね」

「…いや」

「春人くんも、ごめん」

『私は大丈夫ですよ。幸い、御堂さんが大層 御心の広い方でしたので助かりましたし。
そういう訳で、私の役目はここまでですね。

御堂さん、こんな私なぞにお付き合い頂き ありがとうございました。それでは、失礼致します』

「おい、待てよ」


早々に立ち去ろうとする私の腕を、虎於は掴んだ。その顔には、変わらず余裕が溢れている。


「だから、俺はまだあんたの答えを聞いてない」

『交渉は決裂です』

「??」


私達の会話について来られない龍之介だけが、小さく首を傾げた。そして、この時 初めて虎於の顔が僅かに歪むのを見た。


「…こんな機会はまたとない。後悔するぜ?」

『残念ながら私は、顔の整った男にも、お金にもスイートルームにも夜景にも、興味がないんです。
ですので、貴方がもし 私の興味を引ける物を見つけられたその時は…またお声掛け下さい。
貴方がそれを差し出してくれるのであれば、私もそれ相応の物を差し出しましょう。

いつか、互いにとって有益な取引が出来るといいですね』


ふわり微笑むと、虎於は腕の力を弱めた。その隙に、私はするりと2人の間をすり抜ける。

背中に、虎於の楽しそうな笑い声を受けながら。ただ真っ直ぐに自室を目指した。




「はは! はははっ、やっぱり、面白いな!」

「えっと…なんだか、凄く楽しそうだね」

「あー…笑った。いや、悪いな。乾杯もしないままで」

「ううん、気にしないで。
それにしても、随分 春人くんと仲良くなったんだね」

「…春人くん、か」

「え?」

「まぁ、べつにいいけどな」

「??」

「本当は今日、あんたには聞こうと考えてた事があったんだが。でも、それよりも興味を引かれる対象を見つけちまった。

なぁ龍之介。中崎春人、俺にくれよ」

「……ごめん。ちょっと、君が何を言ってるのか分からない」

「はは。悪かった!謝るから、そんな怖い顔するなって」

「なんだ…冗談か、驚いた」

「冗談、ね。
さて、それはどうかな」

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