第81章 子供じゃないんだ、分かるだろ
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『すみませんでした』
「え、どうして春人くんが謝るの?謝らなくちゃいけないのは俺の方なのに…」
『いえ。あの事態は予測出来たはずです。私が、龍の馬鹿ぢか…怪力を予見してさえいれば』
「馬鹿力を怪力に言い直す必要はあったの?プロデューサー」
無事に撮影を終えた私達は、タクシーでホテルへと向かっていた。
『せめて、木刀ではなく竹刀に留めておけば…』
「ま、改めて龍の馬鹿力を再確認したな。そういや前に、服を破かれた事あったっけ」
『なんですか、その怖いエピソード』
「俺を呼び止めようとして肩を掴んだ龍が、その勢いで俺の服を破いたんだ」
「あぁ、あったねぇ。そんなこと。懐かしいなぁ」
「そんで、たまたま そばを通り掛かった天に、糸を持ってないかって龍が聞いたんだよ。そしたら天が “ 持ってない。もし持ってたたら その糸でキミ達の口を縫い付けてる ” って言ったんだ」
「ふふ。あったね、そんなことも」
『なんですか、その怖いエピソード』
私と出会う前の3人の零れ話に耳を傾けていると、今日泊まるホテルが見えてくる。
「前に沖縄に来た時は、龍のお義父さんのホテルにお世話になったよね」
「そうだったな。でも、今回は違うのか」
「うん。今回は、社長が取ってくれたんだよね。それがあのホテルか…凄いホテルだね」
私達は一様に、どんどん大きくなるそれに目をやる。
『えぇ。皆さんもきっと、ご存知なはずですよ。
今日お世話になるのは…
御堂グループが経営するホテルです』