第81章 子供じゃないんだ、分かるだろ
「う、これは…思ってたより、きつい…っ」
「龍!左だ!左!」
「左…左って、どっちだっけ」
「行き過ぎだよ、もう少し右に寄って」
「み、右…」
ふらふらと、しかし着実に目標へと近づいて行く。やがて、天と楽の声が重なる。2人の、そこだ!という声を受け、龍之介は木刀を振り上げる。
「よし!ここ、だ!」
真っ直ぐに振り上げられる木刀。その美し過ぎるフォームを見た瞬間、場にいた全員が 何かを予見した。
あ。これ、ヤバイかも と。
スイカに、脳天があるのかは 分からない。しかし、もしもあるとするならば、龍之介が捉えたのは確実に脳天だった。
ドッパァァン!!
と、よもやスイカ割りでよく耳にする音とはかけ離れた音。水分が弾ける音が、辺りにこだました。
かなり離れていた天と楽だが、頭からスイカ汁を これでもかと被る。
「やった!手応えあり!ねぇどうだっ……た?」
目隠しを外し、振り返る龍之介。周りから何も言われなくても、真っ赤に染まった2人を見て、全てを悟ったもよう。
「ご、ごめん!目が回ってたから、力加減が効かなくて!あぁ、スイカが…スイ…。あれ?スイカは?」
「たった今、お前が木っ端微塵に吹き飛ばしたよ。可食部どころか、見事に全部消え失せた」
「種が、弾丸みたいに飛んで来た…」
そしてエンディングトークに入る。
3人の手には、スイカの代わりにグラスが握られていた。中身は、そう。搾りたてのスイカジュースである。
「俺のせいでスイカ食べられなくて、ごめんね…」
「いや。スイカジュースも美味いからいいじゃねぇか」
「うん。少し入れた塩が、スイカの甘味を引き出していて美味しいよ。だから、気を落とさないで?龍」
「2人とも…ありがとう」
「では、今週はこの辺りでお別れです。皆んな、ボク達と一緒に沖縄を堪能してくれたかな?
じゃあ、来週も…」
「「「TRIGGERといっしょ」」」