第81章 子供じゃないんだ、分かるだろ
私達は、サーフィンが許可されているスポットへとやって来た。さきほどの穏やかな海とは違い、明らかに波が高い。本当にこの荒れた海に、人が入って大丈夫なのだろうか。
不安になり、プロデューサーに向き直る。
『た、高くないですか?波、高くないですか?』
「あはは、どうしたの中崎ちゃん!いつになく慌てちゃって」
『だって他にサーフィンしてる人なんて誰もいませんよ?』
「そりゃあ撮影の為に人払いしてるからね」
『そ、そうでした。安全確認って、ちゃんと取れてるんですよね?』
「もちろんだよ。スタッフがちゃんとロケハンしてるから」
改めて、海に視線をやる。やはり、どうしても安心出来る荒れ方ではない。
不安で胸を手で押さえると、後ろから名前を呼ばれる。
「春人くん」
『…龍』
そこには、サーフボードを抱えた龍之介が立っていた。
「大丈夫!俺、それなりにサーフィン得意だよ。だから安心して、そこで見てて」
ザシュっと板を砂浜に突き刺すと、羽織っていたウインドブレーカーを脱いだ。そしてそれを私に託すと、再び板を手に、龍之介は海に向かっていく。
波打ち際で彼が手を上げると、カメラが回る。緊張した面持ちで海に入る様子を見守っていると、楽が小声で語りかけてくる。
「お前、あんなに過保護だったか?」
『…タレントの安全を確保するのが、私の仕事なだけです』
「そうかよ。ま、見てろって。そんな心配、全く必要なかったってすぐ分かる」
ボード乗ったあいつ、ちょっとすげぇから。と楽は海を見ながら付け足した。