第81章 子供じゃないんだ、分かるだろ
気を取り直し、早速 仕事に頭を切り替えるとしよう。地に足さえ付けてしまえば、怖いものなど何も無い。
「やっぱ、こっちは陽射しが違うよな。この肌に突き刺さる感じが」
「うん。でも俺には、このくらいが心地良いかも!うーん…やっぱりいいなぁ、故郷は!」
そう。私達が降り立ったのは、龍之介の故郷でもある沖縄。もちろん仕事ではあるのだが、龍之介は特に今日を楽しみにしていた。
青々と広がる美しく光る海。いつもとは違った表情を見せる太陽。それらを背景に、龍之介は大きく伸びをした。
『天、ほら見て下さい。龍にはやっぱり、美しい沖縄が似合いますね。いつもの2割り増しで彼が輝いていると思いませんか』
「ねぇ、それって惚気なの?惚気ってことでいい?」
『う…いや、断じて惚気などではありませんよ!私はあくまで、ビジネス的観点から見てそう言っただけですから!』
「ふぅん。ほんとに?」
『本当です。プライベートは別にして、私がこの格好をしている時、龍の事は いちタレントとしか見ていません』
「じゃあ、全然 愛してない?」
『愛してません』
「まったく?」
『1ミリも愛してませんって!』
キッパリと断言した、その時。私は背後に視線を感じる。勢いよく振り向くと、そこには悲しげに目を伏せる龍之介の姿があった。
「…1ミリも…」
『ちっ、ちが』
「いや、いいんだ。俺、ちゃんと理解してるから」
儚い笑顔を浮かべる龍之介に、堪らず私は駆け寄った。そして情状酌量の余地を求める。
『ちょ、あの、私の言い方が極端でしたよね!違うんですよ、あくまで仕事中はという意味であって!いや、仕事中だとしても貴方の事は大切に想ってますよ!ただ、その、性的な目で見てはいないという意味で!』
「はは…大丈夫だよ…」1ミリも…
私達の後ろで、天はくつくつと喉を鳴らす。
「ふふ…まるで浮気がバレた男の謝罪みたい」
「天、あいつらどうかしたのか?」
「べつに。ちょっと、2人をからかって遊んでみただけ」