第80章 嘘吐き
後はよろしくお願いします。そうメイクさん2人に告げて、くるりと身を翻す。
すると、天に就いていた担当が 短い声を上げた。視線は、私のうなじに注がれているようだ。
『??』
「中崎さん、えと、あの…!
ここ、つ、付いちゃって ます」
『……あぁ』
彼女は、自らのうなじを指差して告げた。その顔は赤い…
そこに、何が付いてしまっているのか。瞬時に理解すると共に、私は自分のうなじに手をやった。
盗み見た龍之介の顔には “ やってしまった ” と、モロに書いてある。
「す、すみません!髪の間から、見えてしまって!つい、口走ってしまいましたっ」
『はは。いえ、教えて下さって良かったです。ここで貴女に指摘してもらえなければ、これを晒したまま会場内外を歩き回るところでした。だから、ありがとうございます』
私が言うと、彼女は安堵の息を吐いた。そして天は、呆れたような溜息を吐き出した。
やり取りを見ていた男性メイクさんは、豪快に笑い出す。
「あっはは!やっぱりTRIGGERのプロデューサーだけあって中崎さんも、そっち方面は潤ってんですね!」
『そうかもしれませんね』
「に、しても。跡、それかなり濃いねぇ。中崎さんが飼ってる子猫ちゃんは、随分と激しい子みたいで。心底、羨ましいです」
『ふふ、いいでしょう』
「うわ、その余裕な反応!ちょっと腹立つー」
『おや、それはすみません。これは虫刺されなんですよ、とかって誤魔化した方が良かったですか?』
「ははは!相変わらず、顔に似合わず面白いこと言いますよね」