第80章 嘘吐き
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翌日。
今日は、TRIGGERのライブが行われる。
ファンも心待ちにしている、一大イベント。メンバー達もまた、こうしてファンと直接 触れ合えるライブの日は、やはり嬉しそうである。
そしてこちらは、メイクルーム。
本番を数時間後に控えた彼らは、衣装に身を包み、プロの手によって化粧を施される。
「はい!八乙女さんは完了です。次は十さんの番ですね」
「どうも。じゃあ俺は楽屋戻るんで、龍に声かけてきますよ」
「助かります!お願いしますね」
仕上がった楽は、メイクルームを後にする。天は、今まさに化粧台の前で瞳を閉じていた。
メイクさんは、そんな天の肌に化粧筆を載せながら言う。
「天くんのお肌、本当に綺麗…つやつやしっとり…」
「そうですか?自分では、一般的なケアしかしていないんですけど、プロの方に褒めて頂けると 嬉しいです」
天の無垢な笑顔に、メイクさんは思わずよろめいた。
そうこうしているうちに、龍之介がメイクルームに現れる。
彼は、天が座る隣の椅子に腰掛けた。するとすぐ様、さきほど楽のメイクを担当した男が龍之介に就いた。
「ん?十さんのお肌も、なんか凄く綺麗になってません?前はもっと、男らしい感じだったと記憶してるんですけど」
「あはは。男らしい肌って、どんな肌ですか!」
「キメが整ってるってよりかは、頑丈です!みたいな皮膚して…
あぁ、なるほど」
「な、なんですか?その顔…」
担当者は何かに思い至った様子で、にやにやと下卑た笑いを浮かべた。
「夜の生活の方が、上手いこといってるんですね?まぁそりゃそうかー!なんたって、TRIGGERの十龍之介ですもんね!」
「あ、あはは…」
笑って誤魔化す龍之介。
私にとっても居心地が悪くなってしまったので、早々に退室してしまおう。