第80章 嘘吐き
龍之介は、その顔に嘲笑を貼り付けて続ける。
「高校生の男の子に妬きもち か。はは。俺、本当にどうかしてるな」
『なら、私だって どうかしてる。
貴方に、そこまで想ってもらえて。独占欲をぶつけられて。嬉しいって、思ってるんだから』
「…エリ」
私も、自分の恥ずかしい気持ちを吐露すると。龍之介は、心なしか安堵の表情を浮かべた。
そして、おずおずと こちらへ手を伸ばす。ゆっくりと、輪郭に指が触れる。
まるで、こちら側に拒絶の余地を与えるかのような。自信のなさが表れた所作だった。
でも。彼を拒否するなど、ありえない。
私は彼の手の平に、頬を擦り寄せた。それからゆっくりと目を閉じると、ようやく龍之介は距離を詰める。
そうして私達は、静かに唇を合わせた。
「…エリ。俺、望みが出来たよ」
『嬉しい。やっと聞けるね。龍之介の、心からの願いが』
「君にもっと、男として意識して欲しい。もっと俺にドキドキして、俺だけしか見えなくなって?
ねぇ。俺だけに 夢中になってよ、エリ」
『ふふ。魅力的な おねだりだね。でもね、それならもう、とっくに叶ってるよ。龍』