第80章 嘘吐き
「俺ってさ…実は危ない奴なのかも」
『何それ。詳しく聞かせて』
「だって、おかしくないか?
自分でも制御が効かないくらい、エリを欲するなんて。あんな滅茶苦茶にしちゃうなんて…
本当に、俺は一体どうしたんだろう」
深刻そうに俯く龍之介に、私は驚きの声を上げる。
『え…っ、あれ?もしかして龍、なんで自分があんな暴走しちゃったのか気付いてない?』
「う、うん。というか、エリには分かるの!?」
『多分。じゃあ私が、その気持ちの名前を教えてあげようか?』
龍之介は食い入るようにこちらを見つめて、大きく首を縦に動かした。
それを見て、私はすぐに自分なりの考えを述べる。
『それはきっと、妬きもちに、独占欲だよ』
龍之介の様子がおかしくなったのは、環と2人で会話をしてからだ。
私と自分が恋仲だと明言出来ないもどかしさか。天や楽とは違い、何故か環に完全に信用されてしまっていたからか。
はたまた、環が私へ向ける真っ直ぐな想いにあてられたか。
もしくは、それら全部かもしれない。
あくまで私の予想だが。
龍之介は、そういう恋愛特有のぐちゃぐちゃで複雑な想いを抱えきれず、爆発させてしまったのではないだろうか。
そういう、言葉では説明し難い感情…
それこそが、嫉妬心や独占欲だ。
『ごめんね。私、耳塞いでたけど、唇の動きでタマちゃんが龍に何を言ったのか大体分かってたんだ。
きっと、タマちゃんに悪気はないんだろうけど。結構、色々言われちゃってたもんね…』
「そうか…、うん。そうだ。君が、この気持ちに名前をくれて ようやく分かった。
多分 悔しかったんだ。環くんが、エリへの好意を口に出来ること。自分は、君の恋愛対象外に違いないって彼に思われていたこと。
俺、本当は言いたかったんだ。
この子は、俺のなんだよ って」