第80章 嘘吐き
静かに瞼を持ち上げると、心配そうにこちらを覗き込む龍之介と目が合った。
「エリ、大丈夫?」
『ん…全然、大丈夫。
でもそうか、私 いつの間にか寝ちゃってた?』
「うん。あの後、少し休もうかって2人でベットに入ってから、すぐに。
本当に、平気?その、身体とか…」
彼を安心させる為の嘘などではなく、身体に大きな異常は見られなかった。
ただ、硬い床に身体が接していた部分が ほんの少し痛むだけ。しかしこんなのは、明日には治っているだろう。
私は笑顔で、再度 平気だと告げた。
龍之介は 安堵の表情を浮かべるも、すぐに真面目な顔になる。そして、ベットの上に正座した。
「エリ、ごめん!」
『え、何が?』
「何がって…!あんな、乱暴にしてしまって…
自分でも、自分が信じられないよ。君を、あんなふうに抱くなんて。
良かった…エリが壊れなくて」
『あはは。壊れるって!私、あれくらいで壊れるような柔な身体してないから』
「あははって…そこは笑うところじゃないだろう!君は、俺に怒るところだから!」
ベットから半身を起こした私の両肩を、龍之介は掴んだ。
『なんで?どちらかといえば嬉しかったけどなぁ。あんなに情熱的な龍は、なかなか見られるものじゃないよね!萌えたー』
「……」
『あれ?寝た?』
「寝ないよ!呑気な君に呆れてるんだ!」
さっきまで猛省していたはずの龍之介が、何故か私に怒っている。まぁ、しゅんと項垂れている彼を見るよりずっと良い。