第80章 嘘吐き
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【side 十龍之介】
苦しくて、辛くて。
とても熱くて、でもどこか冷えていて。
心の中が、もうぐちゃぐちゃだ。自分で、自分の気持ちが分からない。
ただひとつ。この胸の内に たしかにあるのは、君の事が愛しいという想いだけ。
そんな、自分でも説明のつかない感情を。ただ、目の前の彼女にぶつける。
『んっ…!ふ、…りゅっ、う』
キスの合間合間に、エリは苦しそうに漏らした。きっと、俺がきつく硬く抱き締めているからだろう。2人の身体の間に、1ミリ足りとも隙間が生まれる事すら許し難かった。
「…ッ、は…エリ…っ」
舌を激しく出し入れすれば、彼女の口元からは雫が零れ落ちる。俺か、彼女の唾液か。それもとお湯か。もう何も分からない。ただ、舌先でそれを掬い上げて舐め取る。
こんな微量な液体でさえ、全部全部、俺が欲しい。全部、全部、俺の物にしないと気が済まない。
あぁ、俺は…気でも狂ってしまったのだろうか。