第80章 嘘吐き
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背中に手をやって、ゆっくりと弧を描く。石鹸でぬるぬるになった彼女の肌は、より一層 俺の理性を破壊する。
ただ背中に手を滑らせるだけで、エリは身体を揺らした。そんな様子が、可愛くて。快感に耐える様子が、いじらしくて。俺はまた、肋骨が軋まんばかりに彼女を抱き締めた。
力任せに抱き寄せれば、エリが壊れてしまうんじゃないか。そんな当たり前のことにさえ、今は気が回らなかった。
「…エリ、可愛い」
耳元で囁いて、そのまま耳たぶを食む。上唇と下唇で、彼女の小さな耳を挟み込む。
『ひ、やっ…、あ んっ!』
耳と背中が弱いエリは、堪らず俺の体にしがみ付いた。弱いところを両方攻められて、腰を揺らす。
ちゅっと音を立てて耳を吸いながら、胸部へと手を伸ばした。
それでなくても柔らかい乳房は、ぬるつきのせいでさらに柔らかく感じる。包み込むように揉み上げると、ふわふわと俺の手に吸い付くようだった。
指と指の間に突起を挟んで刺激してやると、エリは一際大きな声で鳴いた。
そんな鳴き声さえも欲しくなって、俺はまた彼女の唇を塞ぐ。
「…は…はぁ…、エリ…気持ちいいの?」
『…っ、気持ち い、けどっ、んんっ』
「ん…っ」
気持ち良いけれど、どうしてこんな事になっているのか。そう言いたげであった。
そんなのは、答えようがない。
だって、俺にも理由なんて分からないのだから。