第79章 知るか!バーカ!
「え!これが、リュウ兄貴!?」
「言われるまで、全く分からなかった…!凄いですね」
「TRIGGER…!」
驚きを見せる3人だが、明らかに悠だけが異質だった。おそらく初対面であるのに、彼の瞳には憎悪が宿っていたのだ。
理由を訊いてみようとしたのだが、私の前に環が口を開く。
「んで?2人はここで何してんの?仕事?」
「今日はオフだったんだ。だから、仕事じゃないよ」
「ふーん…仕事じゃないのに、なんで中崎さんと2人でいんの?」
「それは、えっと。なんて言ったら良いか…」
龍之介は、環が私に向ける想いに気付いている。気付いているから、言えないのだろう。プライベートで、遊びに出て来たことを。
きっと、龍之介はこれからも環には言わないと思う。私と恋人になったこと。
環が傷付くと、分かっているから。
しかし、どうなのだろう。
私は男心には疎いが、普通は明言して欲しいものなのではないだろうか。
私に、はっきり言って欲しいのでは?
龍之介と恋人になったから、環の想いには応えられないと。
私も環の傷付く顔は見たくないが、もし龍之介がそう思うならば、告げる事も吝(やぶさ)かではない。
「はぁ…四葉さん。
仕事でもないのに こうしてお2人が出歩く理由なんて、決まっているじゃないですか」
「いおりんには分かんのかよ」
「まぁ。検討は、付きます」
私と龍之介は、顔を見合わせ息を飲む。鋭い一織は、一体何に気付いてしまったというのだろう。
「実験。ですよね」
「『……え?』」
「どの程度、髪や顔のパーツを弄れば 民衆から気付かれなくなるのか、試していたんでしょう。実際、私達は十さんの正体に全く気付けませんでした。
しかし、流石ですね。この技術は、有事の際に役立ちそうです。私達も見習って、変装のテクニックを磨くべきなのかもしれせん」
「えー やだよ、めんどっちい」
「で、どうなんです?正解でしたか?」
『え…あ、まぁ。そんなところです』
「ふふ。やはりそうでしたか。
何か理由がなければ、こんな繁華街をタレントと歩く貴方ではないと思っていたんです」
一織は相変わらず、私を見る目が特殊過ぎる。
どこか得意げな彼を見て、そう思った。