第79章 知るか!バーカ!
「んー…どっかで見た事ある顔なんだよな…」
「それよりも、そろそろ中崎さんを離して差し上げては?多分それ、息止まっちゃってますよ」
「うわぁ!!ごめん!」
『っ、は!…はぁっ、し、死ぬかと思った』
「大丈夫!?春人くん!」
まさか、一織に命を救われる事になろうとは思わなかった。
急に抱き着くな とは言わないが、首をキメられるのは遠慮願いたい。
環は、息を荒げる私に謝罪する。遠くから私の姿を見つけ、テンションが上がって飛び付いてしまったらしい。
相変わらず、彼の想いは真っ直ぐだ。
「あのさ、どうでもいいけど。オレもう帰っていい?」
「なっんだよ、もう帰んのかよ!せっかく俺が、ぼっちだった転校生の為に楽しい遊び場教えてやってんのに!」
「はぁ!?誰も頼んでないだろ!」
明らかに面倒そうに、帰りたいと言い放った謎の青年。そんな彼に、環は目くじらを立てる。
その会話の内容だけで、なんとなく状況は把握出来たのだが。私は一織を、じっと見つめた。
その視線に気付いた彼は、嫌々ながらも口を開く。
「…彼は、亥清 悠さん。今日、私達の学校に転校生としてやって来ました。
当然まだ知り合いもおらず、ぼっちだった彼が1人で下校しようとしていたところ、四葉さんがお節介を焼いて 遊びに連れ出したというわけです」
「誰がぼっちだ!」
「誰がお節介だ!」
一織の、これ以上にない簡潔な説明に、環と悠は噛み付いた。
そんな姿を、龍之介は微笑ましそうに見つめている。そして、そんな龍之介を今度は一織が見つめた。
私は、お返しに。とばかりに口を開く。
『では私も、彼の事を紹介しなければいけませんね。
彼は、TRIGGERの十龍之介くんです』
「「「えっ!?」」」
「あはは。どうも はじめまして。十です」
龍之介は、楽しそうに自己紹介をして見せた。