第79章 知るか!バーカ!
予想していたよりも、遥かに大御所。龍之介は面食らう。
「ツクモ、さん…!
あぁえっと、すみません!実は俺、もう他の事務所に所属しているので…お誘いを受ける事は出来ません」
「そ、そうか、そうだよね!君ほど格好良ければ、芸能デビューしてて当然だよ!でも安心して!お給料も、今の事務所の倍出すし、ツクモならもっと君を上手くプロデュースしてあげられるから!」
「え、えぇ!?」
当然、引いてくれるものだと思っていたのだろう。しかし男は、尚も龍之介に食い下がった。
流石に黙っていられず、再度 口を挟ませてもらう。
『とても看過出来る状況ではありませんね…。良い度胸です。私の目の前で、うちのタレントを引き抜こうなどと』
「うちの…?ってことは、あんたはオレと同業…」
『ご明察です。
申し遅れました。私、八乙女プロダクションでプロデュース業を担当しております 中崎春人と申します』
「え…八乙女…プロ」
『ちなみに、担当しているのは彼。うちの筆頭アイドル、TRIGGERです』
「…ど、どうも」
(あ、なんだ。言って良かったのか…)
龍之介が、ぺこりと頭を下げる。その様子を、男は目を丸くして見つめていた。
やがで、正気を取り戻したように笑い出す。
「TRIGGER!?…あっはは!またまた〜!いやそれにしても、大きく出ましたね!よりにもよって天下のアイドルの名を語るなんて!
どう見たって、TRIGGERには見えな……
っ、!!つ、つな、つなつな」
「は、はい。十龍之介です。はじめまして…」
彼が名乗ると、男はその場でひっくり返りそうになる。そんな男を、龍之介はご丁寧にも助けてやるのだった。