第79章 知るか!バーカ!
小難しい話はさて置いて。私達がまずやって来たのは、とあるカフェテラス。繁華街からは一本奥まった道から入る、隠れたカフェだ。
私がこの店を気に入っている理由は2つ。まずは、広々としたテラス席。
他の客が視界に入らないほど贅沢に空間が使われているから、個室のような圧迫感は皆無。広い庭がまるで森のようである。そんな爽やかな新緑の中、食事をしたりお茶を飲んだりするのは格別だ。
龍之介も気に入ってくれたようで、席に着くなり大きく伸びをした。
「んー…っ、緑が気持ち良い!
それにしても、よくこんな良い場所見つけたね」
『でしょう?実は、業界の人に教えてもらったの。人目を避けて、伸び伸びお茶出来る店だよって』
「そっか!じゃあ、エリの広い人脈のおかげだ」
『えっへん』
「あはは」
少しすると、店員がお水とメニューを持ってやって来る。私達は日替わりランチを注文してから、またお喋りに戻った。
『あと このお店、このテラス以外にも素敵なポイントがあるんだよ?なんだか分かる?』
「なんだろう…珈琲が美味しい!」
『ぶーー。
正解は、過剰なサービスがない。でした』
業界人がお忍びでよく来店する為、店員は芸能人にも過剰な反応を示さない。そう教育されているのか、はたまた慣れてしまっただけなのかは分からないが。
『だから龍みたいなイケメンが来ても、5分に一回やって来るお冷サービスの嵐にも合いませーん』
「…5分に一回、店員さんがお水注ぎに来てくれるのって 普通じゃなかったのか!」
『普通じゃない普通じゃない』
過剰なお冷サービスのラッシュは、龍之介を近くで見たいが為に発生している異常事態なのだ。
どうやら彼は、それが当たり前だと思っていたらしい。