第79章 知るか!バーカ!
「で、考えたんだけど…」
『よーし!なんでも来い!』
「どうして体育会系なのかな。
やっぱり俺は、君が側にいてくれるだけで幸」
『却下』
「なんで!」
『そう言ってくれるのは嬉しいけど、私だって何かお返しがしたいんだもん。
龍が、私の笑顔を見ると嬉しく感じるのと同じで、私も貴方が笑ってたら幸せになれるんだよ』
「……エリってさ」
『うん』分かってくれた?
「意外と、尽くすタイプなんだな…!」
『うわぁ。超失礼』
私が眉根を寄せると、龍之介は慌てて謝った。
しかし実の所、私の恋愛経験値はあまり高くない。そもそも、人を本気で好きになったこと自体があまり無いのだ。
だから、自分でも自分の恋愛体質を把握し切れていないのが本音。
過去、恋人と呼べる人は沢山いた。しかし、それは不純な動機からそうなったにすぎない。
つまり、私がアイドルになる為に必要な人とばかり付き合って来たのだ。
愛がなくても、恋人関係になれてしまう。こんな私を、龍之介は軽蔑するのだろうか…
「…デートがしたい」
『え?』
「えっとね、俺の望み。
エリとデートがしたいなと思って」
私が黙って思考している間、彼は自らの望みと向き合ってくれていたらしい。
龍之介の言葉は続く。
「本当は、普通の恋人同士が行くデートスポットとか、行ってみたい。
でも、俺は背が大きいから。いくら変装してみても、どうしても目立つみたい。すぐにファンの子達に見つかっちゃうんだよね。
だから出掛けるとしても、個室のある場所や人の少ないところを選ばなくちゃいけないだろう?
俺が行きたいって気持ちも勿論あるけど、君をそういう場所に連れて行ってあげられないのが、申し訳ないんだ」
『…ふふ。龍は相変わらず優しいなぁ。
貴方の望みを教えてって言ってるのに、いつのまにか また私の為にってなっちゃってるよ』
「あ、本当だ!
やっぱり俺の幸せは、エリの幸せ。ってことみたい」
龍之介はそう言って、照れたように笑ったのだった。