第79章 知るか!バーカ!
『えへへ…ふふ』
「…可愛いなぁ。すごく笑ってる。どんな幸せな夢を見てるんだろう」
2回 3回と、頬に何かが触れた。こそばゆくて、ゆっくり瞳を開く。
そこには、優しい表情でこちらを見下げる龍之介の姿があった。
いや、待て。
どうして彼ではなく、私の方がベットに寝転がっているのだ。
「あ、ごめん。起こしちゃったかな。
あまりに可愛くて、我慢出来なかったよ」
『ん……が まん?』
「うん。ほっぺ、つんつんしちゃった」
『……ほっぺをつんつんして起こすのは私のはずだったのに!』
「えぇ!?何だかよく分からないけどごめん!」
どうやら私は、見事に二度寝という輪廻の渦へと落ちていたらしい。
『あれ…良い匂いがする…』
「あ、うん。朝ごはん、出来てるよ」
『……朝ごはん作るのも、本当は私のはずだったのに!』
「えっ、それも!?ごめんね!」
————
バターの香りと風味を纏った、とろっとろのオムレツ。ソースはケチャップではなくて手作りトマトソース。
大きめのカリカリベーコンとクルトンが乗ったシーザーサラダに、生クリームたっぷりのコーンスープ。そして、さっくり香ばしく焼き上がった三日月型のクロワッサン。
絵に描いたような、美しい朝食である。
『龍は凄いなぁ…。龍みたいな彼氏がいて、私は世界一の幸せ者だよ』
「あはは。エリは大袈裟だな。
俺は料理が好きだし、君がそこまで喜んでくれるなら、毎日だって作ってあげる」
万物をとろけさせる微笑みで、龍之介は言った。
この人以上に 素晴らしい彼女…いや、違った。素晴らしい彼氏がいるだろうか。
多分、というか間違いなく、彼が世界一。うん、チャンピオンだ。