第79章 知るか!バーカ!
早朝。窓から差し込む自然光で、ゆっくりと意識が覚醒していくのを感じる。
まだ微睡んでいたい気持ちを、なんとか押し込めて瞼を持ち上げた。
すると、そこには…
「……ん…、」
極上に男前の、顔面ドアップがありました。
『っ…』きゅぅん
カメラの前では、いつだって雄々しい表情で。
私の前では、悠々しい表情でいる事の多い彼が…
無防備なこの寝顔の、なんとあどけない事か。
身長190センチを超える、立派過ぎる成人男性にこんなことを言って良いものか迷うところだが。
可愛いのである。きゅんとするのである!
『……』
(もう付き合って1ヶ月くらいは経つのに。起きてすぐの、イケメンのドアップは慣れないなぁ)
私は、むにゃむにゃすやすや寝る男の頬を突きたくなる衝動を懸命に堪えた。
息を殺し 人の寝顔を盗み見る私に、突如として天からの掲示が舞い降りる。
私が龍之介より、早く目覚める事はあまりない。特に今日みたいなオフの日は尚更だ。
今日は私が、彼の為に手の込んだ朝食を作り、優しく頬を突いて起こしてみよう。
そしたら龍之介は、きっとこう言うだろう。
“ わぁ!凄いね!君みたいな彼女がいて、俺は世界一の幸せ者だよ! ”
そんな幸せ顔の彼を想像して、私は1人 ニヤニヤと笑みを浮かべるのであった。
そうと決まれば、即実行だ。
龍之介を起こさぬよう、静かにベットから這い出る。台所へ向かい、冷蔵庫を開けてみれば、盛り沢山の食材が詰まっている。
さて。何を作るか、ネット検索をかけてみよう。しかしどうした事か、何を作れば良いのか イメージが泉のように湧いてくるではないか。
そして、勝手に手が動いて 瞬く間に料理が出来上がっていく。いつの間にか、私の料理の腕も上がったものだ。
仕上がった料理の数々が、テーブルの上に所狭しと並んだ。
そこへ、タイミングよく龍之介がやって来る。
『あ、おはよう龍。ちょうど起こしに行こうと思ってたんだ。
見てこれ!私が全部作ったの。一緒に食べよう?』
「わぁ!凄いね!君みたいな彼女がいて、俺は世界一の幸せ者だよ!」
『えへへ…ふふ』