第78章 私…彼氏が出来た
「ちょっと1回、俺に立ち代って考えてみろよ。
例えば俺が、龍の好きな女を好きになったとする。そしたらお前は、俺の事も TRIGGERの事も嫌いになるか?」
「は…っ!な、ならない!」
「だろ!?」
「じゃあ…俺がもし、楽の好きな人と…隠れて付き合ってたら?」
「答えは変わらねぇよ。
まぁ打ち明けて欲しいとは思うけど、仮に龍がLioと恋人やっててもTRIGGERはTRIGGERだ。
逆に、俺に遠慮して自分が身を引くなんて事しやがったら…分かってるよな?」
「は、はい。殴られたくないから、しっかり覚えておくよ」
「よし」
「楽は本当に…良い男だよなぁ。相変わらず、格好良いよ」
「はは。知ってるっつの」
ようやく龍之介は、少し安心したような笑顔を見せてくれる。
俺は、震える手をなんとか抑えてグラスを持ち上げた。内心の狼狽を、悟られないように。
龍之介の言葉をリアルに思い描いてしまい、ほんの少しだけだが動揺してしまった。
俺の知らないところで、エリと龍之介が出逢い。俺の知らないところで、2人が恋人関係になっている。
そんなのは、考えたくもない事態だ。
だからと言って、龍之介に告げた言葉は嘘ではない。恋愛関係で仲間に遠慮されるのはごめんだし、正々堂々と戦って、その上で相手に選んでもらえば良いだけの話なのだから。
でもやはり、俺はエリの事となると臆病になるのかもしれない。
龍之介の例え話だと頭では理解していても、2人が付き合っていると想像するだけで、心が簡単に騒めいた。
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