第78章 私…彼氏が出来た
「あぁ、そう。寂しいじゃねぇか」
そう愚痴ってはみたが、龍之介に何か只ならぬ事情があるのは伝わってきた。
俺の事が信用出来ないから彼女を紹介しないとか。そういう類の事情ではないのだろう。
「楽」
「おう」
「俺は今日、この質問をしたかったから楽に来てもらったんだ。
訊いても、いいか」
「よし。なんでも来い」
龍之介は、顔だけでなく体ごとこちらへ向けた。すごい気迫だった。俺もそれに応える為、体を向かい合わせにする。そして、胸を拳でドンと叩いた。
「俺がもし、君と同じ女性を好きになったらどうする?」
「は?」
予想の斜め上から質問が降って来た。
とは言え、返答に時間など必要ない。答えなんて、考えるまでもなく決まっているから。
「どうもしないけど」
「え…どうもしない って…
で、でも!嫌な気持ちになったり、悲しくなったり腹が立ったりはするだろう?」
「お前なぁ…」
俺は、今日 何度目かもしれない溜め息を吐いた。龍之介は、俺の事をそんなに小さい男だと思っていたのか。心外も甚だしい。
「まぁ、あえて言うなら…
遠慮したら、ぶん殴るからな」
「えぇ…」
「大体、Lio はめちゃくちゃイイ女だ。お前が惚れたって何の不思議もねぇよ。
それにな。龍がどんな女を想っていようが、誰に惚れてようが、お前が俺の仲間で、大切な奴だって事実は揺らぎようがねぇだろ」
龍之介は目を見開いて、俺を見つめた。
「なんだよ、その顔…
まさかとは思うが…そんくらいで、TRIGGERがバラバラになるとか考えてたんじゃねぇよな」
「え…っと、ちょっと、考えてた かも」
「……はぁ」
俺はまた、溜息の数を重ねた。