第78章 私…彼氏が出来た
『…そう、なんだ。ごめん、気付かなかった』
「俺、結構分かりやすくアプローチしてたと思うんだけどなぁ」はぁ
『えっと、言われなかったから』
「っ、言わなくても分かれよ!」
『いやいや言われなくちゃ分かんないよ!だって大和、私とはセフレだって言ってたじゃん!』
「そうだけど!バリバリ昇格チャレンジ中だったっつの!」
『なにそのパチンコの演出みたいな話!セフレから昇格したら何になるの!?』
「恋人に決まってんだろ!」
甘い雰囲気なんて 何のその。私達は車内で声を張り上げる。やっと一息ついたら、はぁはぁと2人とも肩で息をした。
「はぁ…なんだよこれ。
まぁいいや。セフレって名の甘い近道に飛び付いた俺が悪い。
でも この度、俺の本心がちゃんと伝わったわけだ。
あんたは…どうする。十さんと、付き合うのやめるか?」
『ごめん、大和。私は、龍が好』
最後の言葉を紡ぐ前に、腕がぐんと引かれる。そして、すぐに唇を塞がれた。
塞いだのは、大和の唇。それ以上は聞きたくないとばかりに、私の言葉尻を強引に奪った。
『や、だ!大和!やめ』
「エリっ、頼むから…他の奴の物になんか なるな」
『んっ…う、』
大和らしくもない、余裕がない荒々しい口付け。少しの隙間から、熱いものが捩じ込まれる。
肩を叩いてみても、大和は引いてくれない。私は、彼の舌が引かれた隙を見て、必死に唇と歯列を閉じる。
「っ…」
『は…っ、はぁ…恋人のいる人間にキスするなんて、正気じゃないよ!』
「…正気じゃねぇか。そうだよ。正気なんか、とっくに失ってる。あんたを好きになった時点でな」
大和は、僅かに血の滲んだ唇に指をやって、苦々しげに呟いた。