第78章 私…彼氏が出来た
『彼氏が出来た』
スパっと言い放った私を見て、言葉を聞いて。大和は目を剥いた。
「……は?えっ…彼氏?」
『そう。だから、今までよりも一層 気を引き締めなくちゃと思っ』
「あ、相手は?もしかして、万理さんと寄り戻すとか」
『相手が万理なら、別に気を引き締め直す必要ないでしょ』
「そう、だな。じゃあ相手はやっぱり九条か!」
万理は楽。大和は天が、私の相手だと誤解した。どうして、2人して龍之介はスルーするのだろう。ここまで言い当てられないと、そんなに恋人同士に見えないのかと不安になる。
『…相手は龍』
「ま…じかよ!あの人、虫も殺さねぇような顔してサラっと横から掻っ攫っていきやがる!」
『うん?横から、掻っ攫うって。それって、どういう意味?』
「……それ、言わなきゃいけませんかねぇ」
顔を大きく背けた大和。髪の間から覗いた耳が、この暗がりでも分かるくらいに赤かった。
この態度と、放たれた言葉から鑑みるに…
『え?大和、私のこと好きなの?』
「ちょっ、俺の積年の想いをそんな簡単にペロっと言葉にしないでもらえる!?」
『いや積年って言うほど…積もってはないでしょ』
「まぁね!?そりゃ、どっかの誰かさんみたいに10何年もずーっと好きだったわけじゃないけどさ!
でも、それでも…俺は俺なりに、あんたのこと真剣に 想い続けてきたよ」
取り乱した様子の彼は、ずれた眼鏡を正しい位置に戻しながら言った。
恥ずかしがり屋の大和が、なんとか目を逸らさずに私を見つめる。
そんな彼に、私は一体どんな言葉を返せば良いのだろう。