第78章 私…彼氏が出来た
大和に引き摺られるようにして歩を進める。どこへ向かっているのだろう思っていたが、どうやら駐車場が目的地らしい。
彼の背中に、声を掛ける。
『どうして、私がコンビニにいると分かったんですか?』
「時間にうるさいあんたが珍しく遅いから。近くまで来てるかもと思って外に出てみたらコンビニの前にいるとこを見つけただけだ。
予想外の人物も一緒だったけどな」
『えっと…声が、怖いんですけど。
約束の時間を過ぎても連絡しなくて、すみませんでした』
大和は、私の言葉にピタリと足を止める。私の腕は相変わらず掴まれたまま。彼は、正面からこちらを見据えた。
「そんなことで怒ってんじゃねぇっての」
『じゃあ、何に腹を立ててるんですか』
「言われなきゃ、分かんないもんかねぇ」
『言われたら、分かりますよ』
大和は、苦虫を噛み潰したような表情で呟く。
「…はぁ。アイドルって、やっぱつれぇわ」
『??』
「こんな道端じゃ、その減らず口を唇で塞ぐ事も出来ねぇだろ」
『それは、アイドルという立場でなくてもやめておいた方が良いのでは?』
私が冷静に忠告した後、大和はようやく説明文をくれる。
「俺からの電話は無視して、元彼とイチャイチャしてんじゃねぇよ」
『イチャイチャはしていませ』
「俺には敬語使うくせに、万理さんにはタメ口だったのも。俺をイライラさせた原因だから」
『……大和』
ぽつり、落とすように名前を呼ぶと。彼は気まずそうに目を伏せた。もしかすると、言い過ぎたと内心で思ったのかもしれない。
「悪い。ちょっと…いや、かなり理不尽な事言ってるよな。
話、あるんだろ。ほら、早いとこ車ん中行こうぜ」
申し訳程度に微笑むと、大和は再び歩き出した。