第78章 私…彼氏が出来た
唐突な告白に、万理は目を大きくして こちらを見る。しかし。そんな驚きの表情をしていたのは、ほんの一瞬で。すぐに呆れ顔に変わり、大きな溜息を吐く。
「相変わらず、エリは話に脈絡がない!」
『う…ご、ごめん』
「器用ぶってみても、根っこは全然変わってないな。話をするなら、もっと順序立てろ。それに言葉はもっと選べ。そんなんじゃ、誤解されるぞ」
『…万理は、誤解しないの?』
「しないしない。これでも、お前の事は かなり分かってるつもりだ。どうせあれだろ?
“ いつまでも私なんかを追い掛けてちゃ、万理が可哀想!私には万理と楽しく話をする資格なんかないのに!彼が早く前を向けるように私から突き放さなくちゃ!”
とか思っての発言に決まってる」
『そっ、そこまでは思ってない!』
「でも、遠からず。だろ?
はぁ…まったく。わざわざ自分から言わなくても良い事言うんだよなぁ。言い出しにくかっただろうに」
失念していた。この男は、私を知り過ぎている。それは、10年間の空白など物ともしない。
とどのつまり、私の浅い思考など 彼はすべてお見通しなのだ。小細工は通用しない。
「ま、とりあえずは…
おめでとう。って、言っておくかな。
俺の最後のお願いを、ちゃんと聞き入れてくれて ありがとうな」
『……うん』
優しい顔をしていた万理だったが、途端にまた眉の間に皺が刻まれる。そして腕組みをして、私を見下げた。
「でもな、その他の事は…余計なお世話だ!」
『なっ…』
「俺がたとえ誰が好きで誰を追い掛けようと、俺の自由だろ?
それとも、こんな気持ちも迷惑か?
エリと友達に戻りたいと思っていても、まだまだ沢山 話をしたいと思っていても。
それはエリにとって、重荷になっちゃうのか?」
『そん…っ、そんなわけ、ないでしょ。
私だって、万理と話したい事、沢山ある。久しぶりにまた会えて、言いたい事、聞きたい事が沢山あるよ。でも…!
それは、私からは言えないから』