第78章 私…彼氏が出来た
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午後9時ジャスト。アイナナ寮近くに車を停める。ちょうどその時、喉に渇きを覚えた私は、ほど近いコンビニエンスストアに入店した。
アイスティにしようかと思ったが、今の気分は炭酸だった。シュワシュワをガブガブやりたい気分だ。それくらい、やたらと喉が渇いていた。
『……』
(もしかして私…大和に話を付けるだけなのに、緊張してる?)
「そこの格好良い、お兄さーん」
ナンパか?しかし声の主は、間違いなく男だ。
リーチインの扉を閉じてから、私は恐る恐る後ろを振り向いた。
「こんばんは」
『ば、万理!』
「こんなところで何してるんだ?」
声を掛けて来たのは、万理であった。
私が手にしたジンジャエールを見つめて、首を僅かに傾けた。
『万理こそ、ここで何をしてるの?』
「俺?俺はさっきまで、あの子達の寮にいたんだ。ちょっとした野暮用で」
万理の前だと、どうしても敬語が引っ込んでしまう。春人の姿をしているというのに、彼の前では昔の私に戻ってしまうようだった。
「で?」
『…で。って?』
「俺の方は質問に答えたんだから。次はそっちの番だろ?」
『あ、そ、そうか…えっと…。
っていうか、その前に外に出ない?』
「うん、それもそうだな」
いつまでもここでくっちゃべっていたら、店側に迷惑だろう。万理も同じ考えだったらしく、私の提案に頷いた。
彼は、つつがない所作で 私の手元からジンジャエールを取り去ると、自分が持っていた缶コーヒーと共に会計を済ませた。