第78章 私…彼氏が出来た
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スマートフォンを取り出して、電話をかけた相手は 二階堂大和。
そう。私の、セックスフレンド様である。
4〜5回コールを聞いた後、通話が開始された。
今日の夜、時間はあるかと質問すると、21時頃なら寮に戻っているはずだと彼は言った。
話がしたい旨を伝えれば、大和は弾んだ声で 私を居酒屋へと誘った。しかし、それをやんわりと断る。すぐに済むので、車内で十分だと。
相変わらず、あんたは愛想がない。そう寂しげに大和は呟いた。私はそんな彼に、今日の21時頃、車で寮まで行くと伝えてから電話を切った。
大和との電話が終わるなり、私は再びアドレス帳を開く。そして、今度は龍之介の電話番号を表示させた。
通話ボタンを押す寸前で、ふと思い直す。
キョロキョロと、辺りを見回した。人影はないが、どこで誰が聞いているか分からない。
やはり、メッセージでのやり取りにしよう。
《 お疲れ様。今日ちょっと用事があって、帰りが遅くなりそう。晩御飯、先に食べててね 》
画面を落とし、ポケットに携帯をしまう。しかし、ポケットの中のそれはすぐに震えた。
龍之介からの返事だろう。
《 そっか…また接待? 》
《 ううん。今日は違うよ。ちょっと、友達と会ってくる 》
《 そうなんだ!それなら良かった。楽しんで来て!
実は、今日 俺も楽と飲みに行く約束をしたんだ。俺の方が遅くなるかもしれないから、気を遣わないで先に休んでてね 》
《 了解 》
私と龍之介は、同棲生活をスタートしていた。勿論、今まで以上に仲は親密になっている。
けれど、何でもかんでも打ち明ける。なんて事はしない。わざわざ話さなくても良い事を、話すつもりはない。
いくら親密な間柄であろうとも だ。いや、親密だからこそ、話さなくても良い事柄はある。
だから、逐一 彼に言って聞かせたりはしない。
今日 私は、セックスフレンドを切ってくる。なんて。