第78章 私…彼氏が出来た
天がわざわざ説明してくれた内容は、私も幾度となく考えたものだった。
女という異物が、メンバー間に亀裂を生む。そんな事態だけは、絶対に避けなくては。
私は、しっかりと頷いて見せた。
『それにしても、TRIGGERを壊してしまう可能性があるというのに。よく天は、私と龍の関係を認めてくれましたね』
「認めないわけに、いかないでしょ」
『なぜ?言い張れば良いじゃないですか。身近な人間との恋愛は禁止だ!と』
「それを言ってしまったら、キミがもしボクに鞍替えしたくなっても お付き合いが出来ないからね」
『……貴方という人は』
「ふふ。諦めたと思った?虎視眈々と、影から狙っていくよ。密やかに、狡猾にね」
『今、草葉の陰で息を殺し、弓を構える天の姿が目に浮かびました』
「狩人か何か?嫌いじゃないよ、そういうの。
浮かれて飛び回ってる兎は、とても射抜きやすそう」
片目を閉ざし、手で作った銃の口をこちらに向ける天。
そうだった。彼は、とんでもなく…諦めの悪い男だった。
きっと、私が結婚でもしない限り 自分の気持ちを変えたりしないのだろう。
いや、下手したら結婚したとしても…
なんて想像し、身震いをしたところで 楽屋に客が訪れる。
やって来たのは、雑誌取材のインタビュアーであった。
キラキラの爽やか笑顔で、質問に答えていく天を密かに見つめる。そこには、さきほどの狡猾さのカケラもありはしなかった。
つくづく、厄介な男に惚れられたものである。
だが私は、この男の二面性が 存外嫌いではない。