第78章 私…彼氏が出来た
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リハも本番も終えて、私と天は楽屋にて待機している。この後すぐに、雑誌取材の別仕事を入れてあるのだ。
今回、取材対象外の楽と龍之介は、姉鷺と一足先に事務所へと戻っていた。
『取材までには、まだ時間がありますね。温かい飲み物でも買ってきましょうか?』
「……」
天は、むすっとした表情をこちらに向けた。ちなみに、彼がこうなるのは決まって、私と2人きりの時。
カメラの前では勿論のこと、楽や龍之介がいる場では見せない顔だ。
彼がこんなふうに、年相応の青年になってしまう理由…。私には、なんとなく察しがついていた。
『天、まだ私と龍の事が不服なのですか』
「不服に決まってるでしょ」
『打ち明けた時は、おめでとうって言ってくれたのに…』
「勘違いしないで。ボクが不服だって言ったのは、別の理由」
小さな溜息を落とし、若干の間を置いてから天は続けた。
「キミ達の関係を疑う時間すら、与えてもらえなかったボクの身にもなってよ。
怪しむ間も無く “ 付き合う事になりました ” って言われた時の衝撃。ねぇ、キミに分かる?」
『えっと。つまりは、自分で気付きたかったと?』
「……心の準備を、したかったんだよ」
憂いを帯びる、天の表情。私は、そんな彼からそっと視線を外す。
気付いていない。なんて、とてもじゃないけど言えない。
私は、天が私に向ける想いに気付いていた。
天だけではない。ひょんな事から、その恋心を知ってしまった楽は置いておいて。龍之介の気持ちにも、私は気付いていたのだ。
こと自分が対象になると、途端に鈍くなる。そう言われた事もあるが、そこまで愚鈍な女ではないつもりだ。
清らかで、純粋なその想いたち。
そんな想いを真っ直ぐに注いでもらえば、どれだけ目を背けようとも気が付いてしまうというもの。