第78章 私…彼氏が出来た
歌番収録の、リハーサル中。私は、ステージでステップを踏むTRIGGERを見つめていた。
当然、いつも通り3人の動きはビシッと揃っている。一部の隙もないダンスは、相変わらず見ていて気持ちが良い。
と。私の隣で、同じように彼らを見ていたスタッフ達の、ひそひそ声が聞こえてくる。
「はぁ〜…TRIGGER、やっぱ超カッコイイ…」
「生TRIGGERが見られるってだけで、ADやってて良かったって思うよね…」
「同感…。特に最近さ、龍之介がヤバくない?」
「彼は元々ヤバイでしょ」
「いやそうなんだけど!元々エロかったのに、ますますエロさ増しちゃってない?
あぁ…だめ、クラクラしてきた」
「た、たしかに…。一ヶ月くらい前も生で見たけど、ここまでじゃなかったような気が…」
「今の流し目とか…やばい、妊娠しちゃいそう」
「あれは、最近 何かあったと見た」
「うん。じゃなきゃ、人はあんな急に変わらないよ!」
「エロエロビーストの名を欲しいままにしてる龍之介…。毎晩毎晩、色んな女を取っ替え引っ替え抱きまくってるんだろうなぁ」
「いいなぁ!私も、彼になら取っ替え引っ替えされたい!」
彼女達は、的確に龍之介を見抜いている。しかし、部分的に間違っている。
たしかに龍之介は、毎晩毎晩 女を抱いてはいる。しかし断じて、取っ替え引っ替えなどはしていないのだ。
そんな事を考えていると、昨夜の彼との情事が脳裏に浮かんできてしまう。すぐさま、そんな不埒なイメージを頭の中から払拭する。
私はスタッフから視線を戻し、再びステージを見つめる。すると龍之介から、極上に甘いウィンクが飛んできた。
私は、僅かばかりに口角を上げる。その微かな笑顔を返事としたのだった。