第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
両手を顔の横に持って来て指を曲げ、ガオーと獣のポーズを取るエリ。そんな、獣と呼ぶには愛らしい彼女は言葉を続ける。
『こんな、世間一般から見れば悪者な私だけどね。それでも、龍の事は一所懸命 幸せにするよ』
「ありがとう。でも、幸せにしてあげようなんて思わなくてもいいよ。
俺は、君の隣に居られれば もうそれで幸せだから」
『本当に謙虚だね。もっともっと、欲しがってもいいのに』
「うーん、もう既に大満足だからなぁ…。
例えば、これ以上 何を欲しがればいいと思う?」
俺が首を傾げて問えば、彼女も同じ様に顔を傾け思慮に入る。
『例えば…そうだなぁ。
あ、お金とか?』
「それ、ヒモじゃない?」
『 あはは。
“ 俺の代わりに、稼いで来いよ ” とか言ってみる?』
「付き合ってその日に別れたくないから、やめておくよ…」
あまりにダークな冗談。俺はついつい、彼女の男性遍歴が気になった。変な男に捕まった過去など、なければ良いのだが…
『まぁ冗談は抜きで、私は本気だからね。
私の全身全霊の力を持ってして、この先ずーっと、龍を支えて行きたいと思ってる』
「ずっと…か。嬉しいな。
もし俺が、歌をうたえなくなっても?ずっと、傍にいてくれる?」
『当然』
「俺がアイドルじゃ、なくなっても?」
『当たり前』
「もし何か…とんでもないどんでん返しが待っていて、TRIGGERの仕事がゼロになっちゃっても?」
『勿論。
って、言いたいところだけど…。そんな事には、ならない。
だって、TRIGGERのプロデューサーは私だから。どれだけ凶悪なトラブルがこの先に待っていたとしても…
この私が、TRIGGERを明るい場所に導くよ』
胸に手を当て、悠々と自信に満ち溢れた表情をこちらへ向けるエリ。そんな彼女の、強い意志が宿った瞳に思わず見惚れる。
世界で一番 格好良い女性であろう君は、
今日から俺の、愛しい恋人。
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