第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
俺達が交際を始めるに当たって、遵守すべきこと。その項目の擦り合わせを行う流れになった。
これは絶対に必要な話し合いだと俺も思うが。付き合う事になった当日に行ってしまうところが、なんとも彼女らしい。
『龍は素直で分かりやすいからなぁ…。カメラの前だけじゃなくて、私と2人きり以外の時は、気を抜き過ぎないようにね!』
「が、頑張ります…」
『大丈夫だって、信頼はしてるけど』
彼女の言う通り、きっと俺はすぐに顔に出てしまうに違いない。声に、表情に視線に、エリが好きだと。付き合っているのだと、滲み出てしまうだろう。
そうならぬよう、気を引き締めなければ。
『私も、気を付けないと!龍の前で、デレデレしちゃわないように』
「エリがデレデレ?あはは。そんな心配は必要ないんじゃない?」
『買い被りすぎ。私だって、好きな人の前でくらいデレるよ』
「そ、そっか」
俺は、思春期の男の子か。頭の中で、自分に突っ込みを入れた。
彼女が口にした “ 好きな人 ” というワードに、いちいちどぎまぎしてしまうのだ。そう突っ込みたくもなる。
そんな俺の様子を見て、何を思ったのかエリは告げる。
『あ、そういえば…私はまだ言ってなかったね。
私も、龍の事が好きだよ』
「〜〜っ、あ、ありがとう。えっと…すごく、嬉しいよ」
『あはは。照れてる』
「いやそりゃあ照れるよ!」
頬をほんのりと染め、歯を見せ笑う彼女をもっと見つめたい。しかしそうすると、俺のこの赤い顔も見られてしまう。
こんな些細なジレンマでさえ、愛おしくて仕方がないと感じるのであった。