第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
俺は、彼女に向かって手を差し伸べる。
「エリ。俺の隣を、選んでくれないか?」
彼女は、俺の差し出した手を、そっと両手で包み込んだ。
『私で良ければ、よろしくお願いします』
嬉しい、だとか。幸せ、だとか。そういう言葉では、到底言い表せない。
ふつふつと、温かな気持ちが胸の内から湧き上がってくる。
10年も20年も前から、欲して止まなかったものが、手に入ったみたいな。
どれだけ手を伸ばしても、届かないと思っていたものに、触れられたみたいな。
憧れを抱くことしか、許されないと思っていた存在が、突然 隣に舞い降りたみたいな。
「ありがとう エリ。こちらこそ、よろしくお願いします。
前に君は言っていたよね。恋は、相手を勝手に好きになって 勝手に追い掛けるものだって。
でも 愛は、2人でするものだから。
今日からは、俺とエリの共同作業だ。俺達2人で、愛を育んでいこうな」
『…格好良い』
「え。そ、そうかな。べつに、普通だと思うけど…」
『ううん。龍は、やっぱり格好良いよ。そういう考え方も素敵だと思う。
でも良かった…。実は、ちょっとドキドキしてたんだ。もしかしたら私の気持ちは、迷惑なんじゃないかなって』
「迷惑って…そんなわけないじゃないか!
でも、実は俺も同じ事を思ってた。
君が、TRIGGERを1番に考えているのは知ってたからさ。俺がTRIGGERのメンバーで、エリがプロデューサーに就いている限り、俺は選んでもらえないんじゃないかって」
言ってから、はっとした。
俺は、思い出したのだ。大神万理が、彼女に託した 最後の願い。
彼は言った。
もう、間違わないでくれ。と。
夢も愛しい人も、両方を追い掛けて欲しい。と。
きっと彼の存在は、未だエリの中で息衝いているのだろう。