第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
『それからずーっと、TRIGGERの隣で、十龍之介という人間を見続けた。
応援してくれるファンに、良い夢を見てもらいたいって努力する姿も。まるでお兄さんみたいに、天と楽を引っ張っていく姿。事務所が売り出したいキャラクターと、本当の自分とのギャップに悩む姿も。
だからね。それなりに、龍の人となりは分かってるつもり。
貴方は、本当に純真で真っ直ぐで、優しい人…。
私はね…いつの間にか、そんな龍に惹かれてた』
「え…ちょ、待っ」
『本来なら、私が貴方達を支えるべき立場なのに。龍は、いつだって私を支えてくれた。
私が曲を作れなくなっちゃって、ぐずぐずになって。それでもまだ独りよがりに立ち回ろうとした私を。龍は、叱ってくれたね。周りを頼る大切さを、教えてくれた。
私と一緒に堕ちても良いって、言ってくれたこと。私と一緒に戦いたいって言ってくれたこと。全部、全部覚えてる。全部、本当に嬉しかった。
吹雪の雪山で、自分の身も案じずに、私を探しに飛び出しちゃうところ。どれだけ頼んでも、私を1人で泣かせてくれないところ。ちょっと困っちゃう気持ちもあるけど、それもやっぱり嬉しくて。
気付くのに、すごく時間かかっちゃったけど。私が辛い時、しんどい時、いつも龍がいてくれた。
1番最近だと、万理から貰った曲を 私の代わりに歌ってくれたね。ずっと、御礼を言わなくちゃって思ってた。ありがとう、龍。
…そんな優しい貴方が、こんな私の隣にいてくれて。当たり前みたいに、この手を引いてくれる。
それって本当…奇跡みたいに、幸せで。
出来ることなら、これからも貴方の傍にいたい。
だって私は…、私ね。龍の事が !』
「ごめん!!待って!」
俺は、彼女の口元に慌てて手をやった。