第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
「え…っと。それって…どういう意味?」
『龍は、どういう意味だと思う?』
ソファの上で、四つん這いの姿勢になったエリ。上目遣いで、ぐっと俺を見つめる。
その悩ましげな瞳には、なにか魔力でも宿っているのだろうか…?体温が上がって、頭がくらりとした。無意識で唾を、ごくりと飲み下す。
危うく理性が吹き飛んでしまいそうになり、慌てて頭を振る。それから、リモコンを掴んでテレビの電源を落とした。
部屋は、静寂に包まれて。俺は、ガっとエリの両肩に手を置いた。
「エリ…!君がここに来たのは、俺に何か話しがあるからなんだろ?」
『!』
彼女の反応からすれば、俺の予想は当たっているのだろう。
わざわざ休みの日に、俺の家に出向いたのだ。きっと、それなりの話に違いない。
「心の準備なら、とっくに出来てるから大丈夫。気遣いはいらない。
どんな話でも、冷静に受け止めてみせるよ。だから、話して」
『…うん。分かった』
エリは、力強く頷いた。
姿勢を正し、俺の前で正座をする。
そして、語り始めた。
『龍は、私達が初めて会った瞬間って覚えてるかな。私は、よく覚えてるよ。
龍とは、楽と天よりも後に出逢ったんだ。
2人からは、敵を見るような目を向けられちゃって。前途多難だなぁなんて思ってたんだけど、龍。貴方だけは違った。
初めて会う私にも、満面の笑顔を向けてくれた。気遣う言葉を掛けてくれた。
私は、その時に思ったの。
あぁ。この人は、なんて優しい人間なんだろうって』
どんなネガティブな話が飛び出しても良いように、心づもりをしていたのだが。彼女が語る内容は、とても懐かしくて心温まるものだった。