第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
エリは片眉を上げ、俺の手をどける。自分の言葉を遮られ、不服なのだろう。
『…なに』
「あ、ご、ごめん!でも、ちょっと待って!」
『え?待つの?龍が話してもいいって言ったくせに』
「それはそうだけど!まさか、そんな内容だなんて、思ってもみなくて」
彼女が決定的な文言を口にする前に止めてしまったので、確信があるわけではない。
しかし、いくら鈍い俺でも想像がついた。
エリが、あの後どんな言葉を発するつもりだったのか。
『さっきから聞いてれば、まさか とか。そんな とかばっかり。龍は、自分に自信がなさ過ぎるよ』
微塵も、思い描いていなかった。
彼女に、自分が選んでもらえるなんて。
俺の周りには、楽や天がいて。2人は、男の俺から見ても格好良くて、さらには性格も良くて。
彼女に好きな人がいると分かった時。きっとそれは、2人の内のどちらかだと思った。
「…君の好きな人は…君が、追い掛けたいって言ってた人は、絶対に、俺じゃないと思ってた」
『相変わらず、謙虚な人。どうしてほんの少しも、それが自分かも。って発想を持たないかな』
エリは僅かに顔を傾けると、困ったように笑った。
「話、遮ってごめん。でも、俺も男だから…。どうしても、君よりも先に言いたい言葉がある」
言った後、俺も彼女に倣って正座をする。膝と膝を突き合わせれば、彼女は手のひらを上に向け、どうぞ。と、先を譲ってくれた。
面と向かって、告げるのは初めてだ。
エリへの、この熱い気持ち。
いつだって、胸の中で燃えていた この熱い気持ちが。
どうか、目の前の彼女へ届きますように。
俺は、叫びにも近い声量で、全身から絞り出した。
「エリ!ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!」
『……なんて?』
やってしまった。