第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
『それで、えっと何だっけ?あとは』
「ん?何が?」
『今日の予定。家事を片付けるって言ってた』
「あぁ!そういえばそうだった」
『ふふ、忘れてたの?』
忘れてしまっていた俺を、誰が責められよう。きっと誰だって、好きな子が突然 家に来る事になれば、予定の1つや2つ頭から飛んでしまうに違いない。
「うん…忘れてた」
『そっか。私が覚えてて良かったね。褒めてもいいよ?』
「あ、ありがとう?」
『ふふん。で、何からする?』
「とりあえず掃除かな」
『分かった。じゃあ私は、お風呂とトイレ担当ね!』
「えぇ!?いいよ エリはそんな事しなくて!ここで休んでてくれ!テレビ見るとか…あとは昼寝するとか!」
『いや、いい。手伝う』
結局、彼女に押し切られるかたちで分担してしまった。
エリがリビングから姿を消すと、俺は朦朧とした頭で掃除機をかける。
「…どうして、こうなったんだっけ」
たまにの休みに、エリと過ごすことになって。ジムで共に汗を流し、それから家に来てくれて…?手料理を作ってもらい、さらに掃除まで手伝ってくれる。
…幸せ過ぎて、怖くなって来た。
人は、幸せが過ぎると その反動を恐れるものだ。
もしや この後、俺はとんでもない悲劇に見舞われるのでは?
そもそも どうして彼女は、この家に来たのだろう。俺に何か話しでもあるのだろうか。
それは、とてつもなく重大な話かもしれない。もしくは、すごくネガティブな話か?
とにかくエリは、それを言い出せないでいる。
優しい彼女は、なるべく俺を動揺させまいと、いつになく優しく接してくれているのでは?!
ショックを少しでも和らげる為に、俺が喜ぶような行為を立て続けに実行しているのではないだろうか。
そんな勝手な想像が、頭の中でむくむくと膨らんでいくのだった。