第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
運動を終え、ジム内のシャワーで汗を流し終えた俺達。共に出入り口の自動ドアを潜る。
「お疲れ様。なんか、お腹空いちゃったな」
『私もです』
「ちょうどお昼時だもんね。何か、食べに行こうか?」
俺がこの言葉を口にするのに、一体どれほどドキドキしているのか。彼女はきっと、知る由もないのだろう。
『龍は確か、家事を片付けなければいけないと言ってませんでしたか?』
「そうだけど、それはべつにご飯の後でも大丈夫だから」
『龍の家に行っても良いですか?』
「えぇ!?」
『やっぱり、いきなりは迷惑でしたかね。ごめんなさい』
「い、いやいや!全然!迷惑なんかじゃないけど!でも、なんで」
『家事、手伝います』
「なんで!?」
『昼ごはん、作ります』
「なんで!?」
とてつもなく嬉しい。とてつもなく嬉しいが、なぜ彼女は急に驚くべき提案ばかりをしてくるのだろう。
驚きのあまり、俺の口からは なんで?が3回も飛び出した。
『やっぱり、迷惑ですか?っていうか、いきなり家に行きたいとか、キモいですか?』
「キモいわけないし、迷惑でもないよ!むしろ嬉しいくらいだ。
えっと、エリは今日もバイク?」
俺は車で来ていた。きっと彼女は、いつも通りバイクだろう。もしそうなら、バラバラで俺の家に向かう事になるが…
エリは笑って首を振った。
『いえ。今日は電車で来たんです』
「そっか。でも珍しいね。どうしてバイクで来なかったの?」
『龍が、車で来ると思ったから』
彼女はまた、嬉しそうに はにかんだ。
そんな愛くるしい笑顔を向けられると、俺は何も言えなくなってしまう。
それに。エリが言った、その言葉の意味は?
否が応にも、期待してしまう。だって、その言い方じゃまるで…
まるで、初めから俺の家に来る算段を立てていたみたいではないか。