第77章 ぃやーぬくとぅ かなさいびーん!!
俺の方は、エリが腹筋を鍛える場所のすぐ側にある、ベンチプレスへと向かった。
そして慣れた手つきで、バーベルに重りを付けていく。
いつもよりも、重りの量を若干増やしてしまったのは 男の見栄だろうか。
無意識で、彼女に少しでも良いところを見せようとしている自分が、なんだか可笑しかった。
早速横になり、普段よりちょっと重いバーを上下する。すると、大胸筋が じわりじわりと熱を持つ。
その時、ふと突き刺さるような視線を感じた。そちらの方へ顔を向けると、案の定 エリが じっとこちらを見つめていた。
俺はバーベルを一旦置くと、彼女に声を掛ける。
「こら、腹筋はどうしたんだ?駄目だろ、サボったら」
『…いや、重りを上げる龍の腕の筋肉が、綺麗で。つい見惚れちゃいました』
冗談めかして言った俺に対して、彼女は至って真剣だった。そう真正面から褒められると、どう返して良いか分からないではないか。
「え…っと、じゃあ、もっと見る?」
『見る』
自分で、なんだその返しは。と、突っ込みを入れたくなる返答だったが。エリは嬉々として顔を輝かせ即答した。
そこからは、筋トレをする俺を、彼女がひたすら観察するという謎の時間が始まった。